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電子契約の定義と特徴

○電子契約の定義
 電子契約の運用方法については、契約文書をPDF化し、そのデータを電子メールに添付し、契約当事者間で取り交わす最も簡便な方法から、今日、主流となっている電子契約サービス事業者が契約当事者の間に立って電子契約を提供する方式まで様々な方法によって行われています。
 そして、このような状況から、その定義も様々になされていますが、ここでは、電子契約とは「電子的に作成した契約書を、インターネットなどの通信回線を用いて契約当事者の電子署名をを付与することにより契約の締結を行うもの」(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会電子契約委員会の定義より)という定義を採用したいと思います。

○電子契約の特徴
 電子契約の特徴について、ご紹介するため、まず、紙媒体を用いた書面契約締結の流れを確認していきたいと思います。
 書面契約においては、契約内容を記載した紙媒体を持参または郵送し、紙媒体に押印・署名することで契約が成立します。
 一方、電子契約では、契約内容を記載した電子ファイルをインターネット上にアップロードし、電子ファイルを交換、これに、契約送信者・契約相手が共に電子サインまたは電子署名を施すことで契約が成立します。
 次に、契約書の保管場所についてですが、書面契約においては、書棚や倉庫という物理的な場所が必要であるのに対し、電子契約事業者を用いた電子契約においては、電子契約事業者の管理するサーバー上に電子データとして保管されることになります。
 この保管場所に関する差異は、電子契約を用いることで、契約書の管理コストを低減させるとともに、利用する電子契約事業者に契約書の検索機能が備わっている場合は、契約の有効期限管理等の契約書管理業務負担の軽減というメリットをももたらしてくれます。
 さらに、オンラインでの契約締結は、印紙税法基本通達第44条の課税文書の作成に該当しないため、収入印紙が不要なため、収入印紙代を節約することができます。

電子化できる契約とできない契約

○電子化できる契約とできない契約について
 現在、電子署名法によって多くの契約書を電子化することができますが、条文により電子契約化に条件がある契約、書面の作成が契約の成立要件となり電子契約化できない契約も存在します。以下でその一例を列挙いたします。

電子化できる契約
・秘密保持契約書
・業務委託契約書
・雇用契約書
・顧問契約書
・代理店契約書
・労働条件通知書
・売買契約書等

電子化できない契約
・定期借地契約書
・定期借家契約書
・重要事項説明書(35条説明書)等

電子契約の法的安全性

○電子契約の法的安全性について
 そもそも、契約の締結に関する法的前提として契約の成立と方式について定めた民法第522条では、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方承諾をしたときに成立する」、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」とされています。
 つまり、法的には、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立には、書面によるかいなかや押印の有無が絶対視されるのではなく、申込みと承諾の有無が重要視されるのです。
 仮に、契約の有効性について裁判上で争うこととなった場合、民事訴訟法第228条第4項では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」とされており、ここでは、その文書が真正に作成されたものか(偽造の有無)【形式的証拠力】と証明する事案に関係があるものか、文章の内容は真正なものか【実質的証拠力】が問題とされます。
 加えて、民事訴訟法第247条では、「文書の成立の真正は本人による押印のみで判断されるものではなく、文書の成立経緯などの証拠全般を用いる」とされており、文書の成立の真正は本人による押印の有無のみで判断されるわけではなく、文書成立の経緯などの証拠全般を用いて裁判官が判断する【自由心証】ことになります。
 その点電子契約は、電子署名法第3条において「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適切に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する」とされており、利用する電子契約事業者が本人確認が可能な機能を有するサービスを提供している場合、その電子契約は、法的に真正に成立したものと仮定されます。

電子契約・電子署名の有効性が裁判で認められた事例

○電子契約・電子署名の有効性が争われた裁判例
 令和に入り、COVID-19(新型コロナウイルス)の流行もあり、電子契約が実際にビジネス上で用いられることが一般化してまいりました。その結果、電子契約に施した電子署名の真正性を争った裁判例が表れ始めています。ここでは、その一つである東京地裁令和1年7月10日貸金返還等請求事件判決をご紹介します。

事件概要
 東証一部上場企業H社とその取引先であるM社が、9億9千万円を貸付上限とする相互極度貸付契約を双方電子署名を用いて締結し、貸付を実行。その後、貸付金返済に関する準消費貸借契約およびコンサルティング契約を両当事者の実印を用いて締結したものの、M社が利息の支払いを怠ったことで期限の利益を喪失し、H社が支払いを求めた。
 裁判においてM社は、相互極度貸付契約の電子署名について、本件相互極度貸付契約書上の被告M名下の電子署名は、原告(H)が被告Mに無断で行ったものであると原契約債務の不存在を主張しましたが、裁判所は以下のように述べ、相互極度貸付契約はM社の意思に基づく電子署名により有効に締結され、債務が存在することを認定 しました。
 「被告Mは、太陽光発電を行うための資金として、原告(H)から合計7億1205万2275円の送金を受け(略)、その後、同送金に係る金員が本件相互極度貸付契約に基づく貸金であることを前提とする本件清算合意に応じた上、上記アのとおり、上記金員の残金である本件旧債務を目的とする本件準消費貸借契約の締結に応じたものであって、本件相互極度貸付契約が存在することを前提とした行動を一貫して取っていたのであるから、本件相互極度貸付契約書上の被告M名下の電子署名は、被告Mの意思に基づくものであると認めるのが相当である」

 上記裁判例では、裁判所が電子署名を用いた契約締結前後の文脈(コンテクスト)から、電子証明書等の検証を求めることもなく電子署名の真正性を認めました。
 さらに、裁判で電子契約事業者を用いて締結された電子契約を証拠や疎明資料として提出され、証拠として認められたという事例も生じており、電子契約を用いることに対し、裁判上の証拠として有効なのかという疑念は、過去のものになりつつあります。

※本項は、弁護士ドットコム株式会社様が運営しておられる電子契約サービス「クラウドサイン」のホームページに掲載されている内容を基に作成いたしました(より詳しく知りたい方は、コチラの「クラウドサイン」ホームページをご覧ください)。
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